豊島ミホについて

豊島ミホという作家は普通の若手作家のような独特の「苦悩と焦燥感」がなくてふとしたときの不安や、嫌悪感とか単純な文章で、言葉に出来ないような微妙な感情表現が上手い。単なる暗さだけじゃなくて、過去の懐かしさや、まぶしさ、切ない甘酸っぱさを感じさせてくれる。


新刊の「夜の朝顔」は短編集なのだけど女の子の小学校時代を1年ごとを追って書かれている。


その中の「五月の虫歯」はダラダラと泣いてしまった。先ほど抜粋したのもその話の中の文章なんだけど。


「ヒナを落とす」も、クラスの中で埋もれている自分、クラスの中で「底辺」のクラスメイトを織り交ぜて微妙な『嫌悪感』の描写が良かった。学年が上がるにつれて、主人公の微妙な心理描写が「あぁ、こんなこと、あったあった」と思いださせてくれる。


豊島ミホ自身のあとがきにこう書かれている。

あの頃の記憶には「しこり」が多い。楽しいことだってたくさんあったはずなのに、思い返すと、砂利を噛んだような気分になります。

ほんと、この表現、ピッタリ。色々あったと思うんだけど、正直消したいことばっか。
修学旅行なんて、あんまりにもグループがつまらないから単独行動して一人でお土産買いまくったっけ。ディズニーランドで。(結局、昔も今も変わってない)


そういえば、唯一晴れた火曜の朝、朝早く起きて窓を開けたら、ラジオ体操の匂いがした。


もうじき、夏休みだね。