東京・地震・たんぽぽ

地震をテーマにいろんな人々を描いた短編集。
豊島ミホの描く心理描写ってどうしてこんなに響くんだろうなぁ。作品ごとに上手くなっていってると思う。
小さい子供を持つ奥さんを描いた「くらやみ」は特に痛いほどだった。自分と少し重ね合わせてしまったのかもしれない。私はまだ主婦でもないし、子供を持っているわけではないけれど子供のような存在*1がいるからなのか「日々の疲れ」的なものをだぶらせてしまった。
ネットの世界はそんなそぶりをせず、「ネットでの自分たち」を綴る主人公。生き埋めにされた暗闇の中で「トイレに行きたいから早く死にたい」という諦めもリアルな感じがした。最後の「生きなきゃダメよ」は私に言われた気がした。
「宙に逃げる」も良かった。

他人に踏みにじられることが自分の仕事なんだ、と思った。きっと、恨みや怒りを消化できない人たちが、わたしたちに悪いものを押し付けているのだ。芸能人という職業は、生きた流し雛であるに違いない。
 そう思うと、世界は簡単に「わたし」と「あんたたち」にわかれた。「あんたたち」の視線を逃れて、わたしは構想マンションの部屋にのぼる。「宙に逃げる」

どの話も「続きが読みたい」ものばかりで、でもこの話の結末なんかは無いのだろうね・・・。地震、きたら私はどうしたらいいかわからないよ。正直なところ、私には何も無い気もする。

*1:手のかかる恋人